作品紹介

『明日の神話』について

Myth of Tomorrow 明日の神話

明日の神話(あすのしんわ)

長さ30メートル、高さ5.5メートルの巨大壁画『明日の神話』は、岡本太郎がメキシコシティに建築中のホテルから依頼されて、1968年~1969年に制作されたものです。
しかし、依頼者の経営状況が悪化し、そのホテルは未完成のまま人手に渡ります。壁画はその際に取り外され、メキシコ各地を転々とするうちに行方がわからなくなりました。2003年、メキシコシティ郊外の資材置き場に保管されていた無惨な状態の『明日の神話』が、岡本敏子によって奇跡的に発見されます。
描かれているのは原爆が炸裂する悲劇の瞬間です。しかしこの作品は単なる被害者の絵ではありません。人は残酷な惨劇さえも誇らかに乗り越えることができる、そしてその先にこそ「明日の神話」が生まれるのだ、という岡本太郎の強いメッセージが込められているのです。
『太陽の塔』と同時期に制作され、“塔と対をなす”といわれるこの作品は、岡本太郎の最高傑作のひとつであり、岡本芸術の系譜のなかでも欠くべからざる極めて重要な作品です。しかし、残念なことに、長年にわたって劣悪な環境に放置されていたため、作品は大きなダメージを負っていました。そこで、(財)岡本太郎記念現代芸術振興財団は、この作品を日本に移送し、修復した後に広く一般に公開する『明日の神話』再生プロジェクトを立ち上げました。
2005年、日本に輸送。愛媛県に修復作業が始まりました。2006年6月に修復が終わり、完成から37年、発見から3年の歳月を経て、再び『明日の神話』はその輝きを取り戻しました。2006年7月汐留にて初めて行われた一般公開では、50日間という短期間の中で述べ200万人の入場者が集まりました。
2007年4月27日~2008年6月29日東京都現代美術館で特別公開され、2008年3月に渋谷に恒久設置することが決定、同年11月17日より渋谷マークシティ連絡通路内にて公開が始まりました。

修正後

設置意図

『明日の神話』を渋谷に招聘したのは、古き良きものと先端が共生する街、東京メトロ銀座線・半蔵門線・副都心線、京王井の頭線、東急東横線・田園都市線のターミナル駅として、人・モノ・情報を街に運び、街と街、人と人を繋ぎ、伝統とサブカルチャー、デジタルとアナログ、様々な顔をもつ渋谷は、岡本太郎の聖地である南青山へと続き、時空を超えて、思いを語り継ぐ場所。人々のエネルギーを受け止める事によって増幅される『明日の神話』の不思議な力が街を行き交う一人ひとりに、未来へ向かうエネルギーとなって戻ってくる場所を提供できるのは、「渋谷」「しぶや」「SHIBUYA」だけです。人々が往来する公共的空間に恒久設置し、新しく生まれ変わる渋谷のエネルギーと重なることでさらに力を増し、それによって『明日の神話』は東京の、そして日本の最高の文化的シンボルのひとつになり得るものと確信しております。

NPOの活動

岡本太郎作の巨大壁画『明日の神話』は、世界の人たちの共有財産です。原子爆弾が炸裂する悲劇の瞬間を誇らかに乗り越える人間の姿を描いた『明日の神話』について、岡本敏子さんは、「岡本太郎の最高傑作」と表現しています。当法人は、その『明日の神話』を永遠に保全し、後世に引き継いでいく活動を展開することで、『明日の神話』が訴えかけている人間の尊厳、平和の大切さ、芸術文化の素晴らしさを内外に広く伝えてまいります。また、渋谷に設置している『明日の神話』は、岡本太郎の生活と創作の地であった「岡本太郎記念館」(東京・港区南青山)、未来の子供たちに贈った「こどもの樹」(同・渋谷区神宮前)、さらに岡本かの子の文学碑「誇り」(神奈川・川崎市高津区)、「川崎市岡本太郎美術館」(同・川崎市多摩区)が国道246号に沿った同軸線上にあることから、私たちは、岡本太郎に深くかかわる、このラインを「TAROの道」ととらえて、その沿道一帯に住み、働き、学び、遊ぶ人々を対象に、『明日の神話』にちなむ象徴的な活動を展開してまいります。

岡本太郎プロフィール

岡本太郎

岡本太郎

1911年(明治44年)生~1996年(平成8年)没

神奈川県橘樹郡(たちばなぐん)高津村(現在の川崎市高津区二子)に生まれる。

1929年(昭和4年) 18歳 フランスパリへ渡欧し数々の作品を制作
1940年(昭和15年) 29歳 戦火(第二次世界大戦)により日本へ帰国
1968年(昭和43年) 57歳 メキシコにて《明日の神話》制作開始(翌69年に完成)
1970年(昭和45年) 59歳 日本万国博覧会《太陽の塔》《母の塔》《青春の塔》を完成

その後80歳を過ぎて、なお多くの作品を世に送り出し、満84歳で亡くなった。

大作として知られる作品
・太陽の塔(高さ70メートル) 大阪府万博記念公園
・明日の神話(タテ5.5メートル×ヨコ30メートル)